7.ヌレークダム

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ヌレークダムを見学する機会がありました。



ダムのあるヌレーク市は首都のドゥシャンベから南東へ約70km離れたところに位置し、人口は約2万人程度です。
四方を山に囲まれ、ダムの建設とともに誕生した町です。
上の写真はダムの下流方面の風景です。


ダム湖の衛星写真(Googleより)


写真はヌレーク市の入り口にあったモニュメントです。下の部分の塊になっているのはタービンの羽根のように見えました。ヌレークはロシア語で Нурек ですが、タジク語では Норак となります。


ヌレークの町へ入ると羊の大群が現れました。タジキスタンではよく目にする光景です。羊の大群が現れると、羊が移動して、道路が空くまで待つほかありません。


ヌレーク市のホテル
ドゥシャンベから離れているので、
出張などで来訪する人々用に建てた
ホテルだと思われます。
レーニン像がしっかり立っていました。


ヴァフシ川にヌレークダムが建設され、そのダムによって形成されたのがヌレークのダム湖です。貯水開始は1972年でした。ダム湖の水表面積は98km2、全容積105億m3で、有効利用容積45億m3、長さ70km、一番広い部分の幅が1km、平均水深107mだそうです。ダム湖の水深レベルは53mの範囲内で変動します。季節ごとに放水量の調整が行われています。ヴァフシ川の水量調整による放水と水深300mの貯水量は、カルシ草原(ウズベキスタン)、クズィル・クム草原(カザフスタン)、ダンガラ台地(タジキスタン)、その他の肥沃な土地を更に約百万ヘクタール程度灌漑させる事が可能だそうです。


ダムの堤防です。
6段ぐらいの台形に盛り土
されていました。


訪問時は夏季でしたので、
ダム湖の水位は満水に近い
状態でした。


堤防の近くにあった見学者用に
準備されたダムの断面図です。

   

ダムはアースダム(土を盛り台形に築いたダム)で、最大高さが300mです。アースダムでは世界一の高さですが、現在建設中のログンダム(タジキスタン)はヌレークダムを越える高さで建設が進行中で、ログンダム完成時にはヌレークダムは世界第二位の高さとなる予定です。ダムの堤防の長さは704mです。


ダム直下にある発電所の建物です。
建物の中央にラフモン大統領の
大きな写真が掲げられています。


コントロールルームです。
ウン十年前に初めてソ連へ来た時に
見かけたようなパネルが並んでいました。


ヌレーク水力発電所の設計は1950年代に開始され、建設が始まったのは1961年でした。
当時はソ連でしたが、全国のコムソモール組織が動員され、国内各地から若者が建設に参加し、予定よりも15ヶ月早く操業開始する事ができたそうです。第一期工事の操業開始は1972年で、最後のタービン(9号機)が稼働したのは1979年でした。タービン総数は9台で、それぞれが330MWの能力です。

タービンルーム

ヌレーク水力発電所の発電能力は3000MWで、タジキスタンの全発電量の4分の3を発電できるそうですが、全ての電力需要をカバーする事は出来ず、水量が低下する冬季にはタジキスタンはウズベキスタンやキルギスタンから電力を輸入しなければならないようです。ダム湖の水は発電のみに利用されるのではなく、農地の灌漑にも利用されています。水量の少ない年でも灌漑は重要ですので、その場合は発電量に制約が出てきます。


ダムから撮った下の発電所
     

これまでヌレーク水力発電所では大きな事故が3度発生しています。(1983年、1999年、2006年)
1983年に発生した事故では、タービンルームが水浸しとなりました。ケーシング固定用のピンにクラックがあり、ピンが破損し、ケーシングから水が溢れ出たそうです。
1999年の事故では配電設備が損傷しましたが、現在に至るも500kWと200kWの設備が完全に補修されてはいないようです。
2006年4月17日の事故は、貯水池(ダム湖)から水を引き込む水路で補修作業中に発生しました。作業実施時に水門が開いており、水流に巻き込まれ、3名の作業員が死亡しました。安全規則が遵守されていなかったのが原因だったようです。