1.タジキスタンの概要

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2009年の夏から2010年の春にかけて、仕事の関係で三度ほどタジキスタンを訪問しました。
滞在したのは3回合計で一ヶ月半ほどであり、仕事に追われ、限られた自由時間でしたが、
時間の許す限り出来るだけ散策し、町の様子を観察し、現地の人々と話をしました。
これまでソ連時代も含め中央アジア諸国には何度か来ていましたが、
タジキスタンは初めて訪れた国でした。
学生時代に山岳部に所属し、山行記録や探検記を読む中で、
スウェン・ヘディンらの中央アジアの探検記には胸を躍らされたものでした。
そもそもロシア語を勉強しようと思ったのも、中央アジア探検史の中で、
プルジェワルスキーをはじめとするロシア調査隊の文献を読んでみたい事が発端でした。

  タジキスタンの正式名称は「タジキスタン共和国」で、
  中央アジアの国であり、ソ連時代は「タジキスタン社会主義共和国」と
  言われていました。独立したのは1991年9月9日です。
  2009年度の総人口は約700万人です。
  首都はドゥシャンベ市で、その人口は679,400人です。(2008年現在)



(写真はクリックするとサイズが大きくなります)


春のドシャンベ郊外(2010年3月3日)



イスマイル・ソモニー像
  タジキスタンはパミール山麓にあり、海への出口はありません。
  中央アジア諸国の中では国土面積が最小(日本の約40%)ですが、
  北側と西側でウズベキスタンとキルギスタン、東側で中国、南側で
  アフガニスタンとそれぞれ国境を接し、イランとロシア国境には
  かなり近いという地政学的特徴を有しています。
  民族構成は、タジク人(79.9%)、ウズベク人(15.3%)、
  ロシア人(1,1%)、キルギス人(1.1%)、他(2.6%)です。(2009年のデータ)
  タジキスタンの公用語は中央アジア諸国では唯一のペルシャ語系言語
  であるタジク語です。タジク語はアフガニスタンのダリ語とか、イラン語に
  近い言語です。このほか、実用言語としてロシア語、ウズベク語なども
  多くの人々が理解しています。最近の若者の間では英語の人気が
  高そうですが、一般的にその実用レベルは、まだロシア語、ウズベク語ほどではありません。




ドゥシャンベ東方の山岳地帯
  タジキスタンは天然資源が豊富なものの(銀、金、宝石類、
  石炭、アルミニウム等々、そしてウランは世界の16%の埋蔵量)、
  国土の93%が山岳地帯であり、インフラは整備されておらず、
  採掘は困難な状況です。
  タジキスタンの宗教はイスラム教スンニ派が主流で、
  東パミール高原の山間部にはシーア派の人々もいるようです。
  経済的には中央アジアの最貧国で、一人あたりのGDPは
  アジア全体で43番目であり、その下に位置するのは
  バングラディッシュ、ネパール、アフガニスタンのみです。




ルダキ公園正面入り口、中央奥は大統領官邸
  タジキスタンの政治体制は1994年に採択された憲法で定めらており、
  大統領制、共和国制、立憲国家です。
  エマムアリ・ラフモン現大統領は1994年に選出され、
  その後の二回の大統領選で再選され(1999年と2006年)、
  現在三期目の任期に入っています。
  政党としては、人民民主党(政権与党)、タジキスタン共産党(現大統領を支持)、
  農業党、経済改革党、社会党、タジキスタン民主党、タジキスタン社会民主党、
  イスラム再生党などがあります。




パミール山麓に広がるドゥシャンベ市
  影響力のある野党であるタジキスタン民主党、タジキスタン社会民主党、
  イスラム再生党などは、エマムアリ・ラフモン大統領が引き続き大統領選に
  立候補出来るよう2003年に行った憲法改定に関する国民投票結果を認めず、
  2006年に実施された大統領選をボイコットしました。
  憲法改定後、エマムアリ・ラフモン大統領は、大統領選に勝利すれば2006年から
  7年間の大統領職を更に二期(最大2020年まで)務める事が可能になっています。


  国内問題としては、1992年から現在も継続中のエマムアリ・ラフモン大統領の任期が
  どうなるのか興味深いところです。任期が長くなりすぎると、独裁化、神格化、
  強権政治が深まり、〜〜政権というよりも、〜〜王朝的になってきます。
  そうなると民主化が危惧され、その陰で権力者一族、縁者の腐敗が進行しそうです。

  それにしても何故か中央アジア諸国の政権は、長期独裁型が多いです。
 



ヌレークのダム湖
  最近の対外問題としては、アムダリアの水利用に関する近隣諸国との摩擦です。
  アムダリアの上流に位置するタジキスタンは、水利権では有利な立場ですが、
  他の分野では多くの弱点も抱えており、
  近隣諸国との友好関係を維持しないと様々な問題が発生します。

  さらには台頭する東の中国、北のロシア、南のイラン、
  アフガンやイラク問題を抱えるアメリカなどの大国の影響力、思惑が重なり合う
  この地域の中で、外交の舵取りも非常に重要な課題となります。