バイカル湖 (東岸と西岸)
2005年8月2日、5日

今回の旅で訪問したのは図に示す東岸と西岸(リストビャンカ)だった。

バイカル湖ミニ情報
バイカル湖はおよそ2500万年前に形成された。
湖の長さは636km
湖の幅は最大部で81km、最小部で27km
湖の沿岸線の長さはおよそ2000km
湖の最深部は1637m、平均深度730m
湖の面積は31500km2(世界で8番目、淡水湖では世界最大)
湖の水量は23000km3で全世界の淡水の5分の1を占める。
湖の標高は海抜456m
湖にある島の総数は30
湖の透明度はホワイトディスクを使った測定方法で40m
(同様な方法でカスピ海は25m、セヴァン湖は20mとの事)
1996年にユネスコ世界遺産に登録された。


バイカル湖手前のセレンガ川には橋が無かった。建設中と思われる橋が見えた。


やがて車と人を満載した艀が接岸した。


安全のために人は車から下車し、車は艀に隙間無く並べられる。
 バイカル湖東岸
 ウランウデからマイクロバスでバイカル湖の東岸をめざした。しばらくシベリア鉄道とセレンガ川が並ぶ街道を進んだ。バイカル湖には多数の川が流れ込むが、その中でセレンガ川が一番大きな川である。バイカル湖に近づくと、セレンギンスクの町が見えてくる。この町の手前で、シベリア鉄道、自動車道路、セレンガ川がそれぞれの方向へ分かれる。即ち、シベリア鉄道は湖に沿って西へ向かい、セレンガ川は北西へ向かい、大きな扇状地を形成しながらバイカル湖に流れ込む。自動車道は北側に進路を変え、セレンガ川を渡る。 
 しかし、その場所には橋が無く、艀による川の横断だった。地元の人々は慣れているらしく、当たり前のように艀に乗り移っていた。一隻のタグボートが前で艀の進行方向を調整し、もう一隻が後ろで艀を押しながら対岸をめざしていた。川幅は300m前後で、乗れば短時間で対岸へ移動出来た。





艀の上では子供たちがバケツに入れたスグリを売っていた。コップ一杯が5ルーブル(およそ20円)。それを買ったら、隣の、やはりバケツにスグリを入れていた別の子供が『おじさん、僕のスグリは買ってくれないの?』と言った。小学校の低学年ぐらいだったろうか。そのスグリも買った時、艀はもう対岸に接岸していた。

対岸からタグボートに曳かれた艀が近づいてきた。


車も人も到着した艀に乗り移る。



松林があったりして、何となく日本の海岸風

 僕らのマイクロバスは、しばらくしてスハーヤ村の手前にある保養地に到着した。ホテルやロッジなどの宿泊施設が並ぶ地区を通り、湖の岸辺へ下っていくと、砂浜の海水浴場が続いていた。湖とはいえ、小波が打ち寄せ、日本の穏やかな海岸線に立っているような気分だった。対岸は見えず、地図では対岸まで50km程度はありそうだった。

砂浜で日光浴をする人々


湖上で水上スキーをする人
       
   久しぶりに泳いでみた。        未来のオリンピック選手?

ダイナミックな泳ぎのコピチコ先生


バイカル湖の伝説
バイカル湖は大家族であった。様々な名前の300人以上の息子と30人以上の娘がいたが、その中でお気に入りは、わがまま娘のアンガラだった。バイカル湖の息子や娘たちは、周囲の高地や山々で誕生した。彼らは水を供給し、父であるバイカル湖を助けていた。彼らはバイカル湖の言う事に従っていたが、末娘のアンガラだけは言う事を聞かなかった。水の中で、はしゃぎ回り、水しぶきを上げて魚と戯れ、父や兄たちが稼いだ財産を浪費していた。しかしバイカル湖は愛する娘の全てを許した。ある時、風がささやいたのか、カモメが語ったのか、放浪の歌い手が話したのか、アンガラは勇者エニセイのことを知り、エニセイ無しでは生きていけないと思った。そして老いた父が寝入った時に、アンガラは岸辺の大岩を砕き、愛する人のもとへと逃げ出した。父が目を覚まし、悲しみ、大声で叫んだ。応えは無く、娘を追ったが、老いた足が役に立たなかった。その時、怒った父は石を掴み、逃げた娘へ投げつけた。その石は「シャーマンの石」の名で今でも存在している。だが、その石はアンガラを止める事は出来ず、父は娘を連れ戻す為に、息子のイルクートを向かわせた。イルクートは長らく道に迷った末に、遠い山々の中にいた妹のアンガラを見つけた。すると、ずる賢い美人のアンガラはイルクートに言った。「お兄さん、戻るのはやめましょうよ。戻ると私は逃げた事で、あなたは、見つけ出すのが遅れてしまった事で、私たちはどちらも笑い者になりますよ。一緒にエニセイのところへ行きましょう。私は彼の妻になり、あなたは彼の親友になればいいわ。」こうしてアンガラ川は、バイカル湖の意に反して、愛した人へ今でも水を運んでいるのである。(注:バイカル湖へ流れ込む川は300以上あるが、バイカル湖から流れ出る川はアンガラ川だけであり、アンガラ川はエニセイ川の支流である。)
バイカル湖西岸(リストビャンカ近辺)
バイカル湖西岸にあるリストビャンカはイルクーツクから最短の距離にあり、
夏季は観光客でごった返すところである。



アンガラ川がバイカル湖から流れ出るところ。


船着き場には土産物屋が所狭しと並んでいた。


樹皮で作った小物入れなど。
どれにも細かい模様が入っている。



バイカル湖近辺で採掘される
石で作ったネックレスなど



ビールのつまみとして、
干し魚は人気のようだ。



ガイドのナージャさん(右)と船長さん


西岸(リストビャンカ近辺)には切り立った山が多く、眺めは良いが
海水浴場などは見あたらなかった。船に乗って湖上から岸辺の風景をながめた。



船上にはオームリを干していた。オームリはバイカル湖だけの固有魚で、サケ科の魚である。

湖上を走る水中翼船


バイカル湖のそばのスキー場の
リフトに乗り、高台へ上がった。



高台の梢の間からバイカル湖が見えた。


バイカル湖のエコロジー問題
 水源となっている地域での森林伐採が進んでおり、国立公園、自然保護区での建設、観光開発などによる野生動物の生存圏の縮小が危惧されている。
 工業廃水、農業廃水を含んだ河川の流入による湖の汚染とか、イルクーツク水力発電所の稼働による湖水レベルの変動もバイカル湖のエコロジー問題となっているそうだ。
 今後予定されている東シベリアから太平洋岸への石油パイプライン敷設プロジェクトもバイカル湖の自然系に悪影響が出ないような対応が望まれる。