ヤマダニの話 | |||
日本ではあまり話題になりませんが、ロシアの森ではけっこう危険な存在です。 向こうのヤマダニは脳炎ウイルスに感染している場合があり、シベリア方面では毎年命を落とす人が多いです。 以前に和訳した新聞記事ですが、良かったらご一読下さい。 |
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サハリンでこのヤマダニに何度か遭遇しました。何だか耳の辺りが変な気がして、手をやったらその手にヤマダニが乗り移ってきました。まだ刺される前の段階だったようです。その他、服に付いていたヤマダニを見つけた事もありました。サハリンのヤマダニはシベリア方面など、大陸側のヤマダニに比べて脳炎ウイルスに感染したヤマダニはとても少ないようです。しかし数は少ないものの、サハリンでヤマダニ脳炎で死亡したというニュースもあり、油断は出来ません。左のヤマダニは僕の頭の辺りを動いていたヤマダニです。僕は頭髪が少なくなり、動いていたヤマダニを頭皮で感じる事が出来、頭から落とし、圧死させてカメラにおさめました。 |
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1)ヤマダニとは ヤマダニは中枢神経を侵し、時々死に至らせる脳炎ウイルスを伝染させる小さな寄生虫である。危険なヤマダニはロシア、ウクライナ、ベラルーシ、バルト諸国、カザフスタンに分布している。 全てのヤマダニがウイルスを持っているわけではない。しかし脳炎ウイルスを有するヤマダニが1%以上の地域は危険地帯と見なされる。ロシアではアルタイ地方周辺とか、テンシャン山脈の北と西の山麓は感染しやすい地域になっている。 ウイルスを感染させるヤマダニが最も危険になるのは5〜6月であり、7〜8月になると危険性は減少し、9月にはほぼ安全となる。 発症例の80%は、ウイルスに感染したヤマダニが人間の皮膚から血を吸う際に脳炎ウイルスが人間の体内に入ることで発生する。その他ではウイルスが表面に付着したヤマダニを素手で除去し、ウイルスで汚染された手から胃腸などの消化器官を経由して感染したり、山羊乳の生乳などからも感染する場合がある。 一般的にヤマダニは動物が通る小道に散在している。低灌木の枝、乾いた丈の高い草、高さ25cm〜1m程度の木々の上などで犠牲者が通るのを待っている。 ヤマダニは人間の体に移ると、頭髪部、耳の後ろ、首、脇の下、胸、腕、肩、腰、股の付け根などで血を吸い始める。ヤマダニが刺す際には、その唾液に痛みを無くする物質が含まれているため、痛みは感じない。 2)安全対策 ヤマダニの危険性がある地域へ向かう全ての旅行者は必ず予防接種をしたほうが良い。 危険地帯へ到着したならば、然るべき予防手段を講じなけれなならない。 自然の中を歩く時の服装も重要なポイントである。ズボンに入れ込む上衣やヤッケはケバケバしない滑らかな繊維のものを選び、袖口を二重のゴム紐で留める事。上衣の下は体に密着する下着を着る事。襟首は閉じておく事。ズボンはベルトをしっかり締めて靴下へ差し込む。頭部と首はフードでしっかり保護する事。 襟首、ベルト部分、足首部分には防虫クリームを塗るか防虫スプレーを吹きかけておく事。防虫スプレーは乾燥した気候であれば効力は数時間継続する。体の露出部にもこれらの防虫剤を用いる。 ヤマダニの危険性のある地域を移動する際には自分自身、または相互にヤマダニが付着していないか検査をする。危険性の高い地域では1.5 - 2時間おき程度、中ぐらいの危険地域では起床時、昼時、夕方の三回程度の間隔でチェックをする事。ヤマダニを振るい落とす事は難しいので、衣服は特に折り返しの部分を入念に調べる事。 道を歩く際にはヤマダニは森の藪や草原などの湿った日陰を好むという事を念頭に入れておくこと。多くのヤマダニはヤマナラシの若木、切り株、木イチゴの茂み、小道や道路沿い、家畜の放牧地などにいる。 藪のない明るい林、風通しが良く、陽の当たる乾燥した松林などに、普通、ヤマダニはいない。 天候の良い条件では、一昼夜のうちでヤマダニが最も活発になるのは朝と夕方である。強い雨、または暑さではヤマダニの攻撃の危険性は著しく低下する。 3)ヤマダニを発見した場合の対応 吸血しているヤマダニに気が付いたら直ちに除去しなければならない。除去する際にヤマダニの頭部を分離させ、その頭部を人間の体内へ残すような事をしてはいけない。 吸血中の虫を除去するには二つの方法がある。ピンセットまたはガーゼでくるんだ指でヤマダニをつかみ、ゆっくり、そっと引き抜く。もう一つは、吸血している部分(頭部の付け根と人間の皮膚の間)を糸で縛り、糸の両端を左右に引きながらヤマダニを体から引き離す方法である。手と刺された部分は必ず消毒しておく必要がある。吸っているヤマダニへ殺虫剤を用いることは、皮膚からヤマダニを完全に引きはがす事が難しくなり、お勧め出来ない。 出発(行動開始)までに予防接種をしていなかった人はヤマダニに刺された時点から三日以内に(医師の指示に従い)、抗脳炎ガンマグロブリンにより免疫治療を受ける事。 4)ヤマダニによる脳炎の症状 ウイルスに感染したヤマダニに刺された後、発症するのは1〜2日後から1〜3ヶ月後と様々である。発症するまでは潜伏期間であり、その潜伏期間中は体のだるさ、食欲不振、眠気、37.2 - 37.4度程度までの体温上昇などの症状がありえる。この後で高熱、ひどい筋肉痛、時には痙攣を伴った発症が急激に始まる。発症後2〜3日目で中枢神経が侵され、筋肉が麻痺し、呼吸が麻痺して死に至る場合もある。周囲の人々にとってヤマダニ脳炎の患者は伝染病の感染源として危険ではない。 5)緊急医療処置 抗脳炎ガンマ・グロブリン治療を行い、免疫性を維持させる。感染の可能性が確認されたならば、それを出来るだけ早く筋肉内へ注入させる。抗脳炎ガンマ・グロブリンは、ヤマダニ脳炎の病原菌を抑え、発症の拡大を防ぐ効果がある。もしも何らかの原因で初期段階にそれを使う事が出来なかった場合、感染後7日間が経過してからでは使用しても効果は無い。 歩行コースでヤマダニ脳炎に感染した場合、被害者を直ちに病院へ送らねばならない。移送時に症状を悪化させる場合がある。従って、病院までの距離が長い場合は空輸を行う。短距離での移送時には病人へ直射日光が当たらないようにし、道中は頻繁に給水を取らせる。 |
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