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ヒグマはサハリン全土、及び千島列島のパラムシル島、択捉島、国後島に生息している。ヒグマはサハリンの森に住む最も大きな肉食獣であり、その体重は600kgを超える場合もある。長い爪が付いた強い手は大きな破壊力を持っており、その一撃で牛の頭蓋骨を打ち砕いたり、肋骨をもぎ取ったりする。ヒグマは歯で鉄砲の銃身をかみ切る事が出来る。
ヒグマは見た目よりも非常に敏捷であり、立ち止まったポイントから時速50kmのスピードで走るのはあっと言う間である。毛の色は黒から麦わら色まで様々である。
ヒグマの発情期は6月に始まり、7月末から8月初旬に終わる。この時期の熊は興奮しており、成長した熊の集団を見かける事も珍しくない。雄熊同士で力を誇示するような争いを演じ、その結果、雌熊は勝ち残った一匹の雄熊と一緒になり、他の熊たちは周辺で行動を共にする。雄熊たちはかなり活発で攻撃的であり、発情期は雌熊のそばにいる。
小熊は1月から2月にかけて誕生する。サハリンでは3匹の小熊を連れた雌熊に出会う事は珍しくはない。
熊の一日の活動量は、季節、エサの有無、獣に共通した生態サイクルによって決まってくる。春から夏の前半にかけて、特に曇天の時などに熊は一日中エサをさがし歩く。熊の活発な行動は鮭鱒の遡上開始まで続く。一般的に熊はエサ場からあまり離れずに、低木の茂みとか、小さな森で昼寝をし、暑い日には冠水した高い草丈の中で身を休める。
鮭鱒の遡上が盛んになる季節、熊の昼の行動は縮小し、夕刻、朝方、及び夜間の行動が活発化する。エサが不十分な場合(特に鮭鱒の遡上が少ない場合)、熊たちの行動は活発になり、ベリー類やハイマツの実、あるいは山菜を求めて一日中行動する。熊は普通は針葉樹の陰で寝るが、寝場所は同じ場所を何度も使う。熊はうす暗がりや密林で人間よりもかなり自信に満ちた動きをする。
熊は雑食性動物である。サハリンでは冬眠から覚めた熊は、陽が当たり、早めに雪の溶ける山の南斜面に出てきて根茎や球根を掘り出す。5月になると川へ出たり、ベリー類を求めて動き、木から落ちて残った果実などを食べる。熊は時々海岸にも姿を現し、浜辺に打ち上げられた魚や海草もさがし歩く。
鮭鱒が産卵のために遡上を始めるとともに熊たちの大部分は川の近くへ移動する。サハリン州では魚は獣たちの主要なタンパク源となっている。魚を食べ終わると熊はベリーや草を求めて移動し、しばらくするとまた川へ戻る。このように食のメニューは多様で豊かなものとなる。熊は秋の冬眠前(10月〜11月)には川から去り、ベリー類や松の実などを食べながら徐々に移動し、冬眠場所へ向かう。熊は共食いをする。大きな熊は小熊を捕まえて食べてしまう。(これは小熊が母熊のそばにいる交尾期によく発生する。)大きな熊が小さな熊(若い熊)を襲って食べた事例が報告されている。
サハリンでは冬眠前のこの時期に、熊は山の中腹か、さらにその上を移動する。冬季の住みかは普通は地中か洞穴である。サハリンでは主に地中での冬眠であり(約65%)、岩場の洞穴での冬眠は少ない(約25-30%)。丘の続く北サハリンの平地でも地中での冬眠が大多数(95%)であるが、東サハリンと西サハリンの山間部では岩場の洞窟をよく利用している(60-70%)。エサが豊富な場合、栄養の良く取れた熊は地表の住みかで横になるだけで、穴に入って冬眠する事はしない。
熊の総頭数は年により多少の変化があるが、サハリン島内には平均して約3000頭のヒグマが生息している。熊の平均寿命は25-30歳である。
人間は熊の一般的な食物ではない。普通の条件では、大多数の正常な心理状態の熊は人間との出会いを避けようとし、最初に人間の所在に気づけば、そこからそっと立ち去ろうとする。もしも出会った場合は、絶対多数の熊は逃げ出す。
しかしながら、人間が熊と遭遇した場合、個々の熊の行動はそれぞれのケースにより「予期出来ないもの」である事を常に理解し、正しく知っておく必要がある。
(サハリン州の森林と特別自然保護区の管理局が作成した資料の一部を抜粋し、和訳してみました。)
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